顔認証決済による究極のキャッシュレス化が進む中国

November 28, 2019
顔認証決済による究極のキャッシュレス化が進む中国
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現金もカードも財布も、もはやスマートフォンさえ必要ない。顔認証技術が普及している中国では顔を向けるだけで商品を購入できる顔認証決済システムの利用が拡大している。

世界でも最先端のモバイル決済インフラを持つ中国では顔認証決済の導入が全国的に進められているが、この新しいシステムに比べるとQRコードさえ時代遅れに見えるだろう。

何と言っても顔の画像とデジタル決済システムまたは銀行口座を事前に連携しておけばカメラ付きのPOSレジで顔をスキャンするだけで買い物ができる便利さが売りだ。

すでに300店舗に顔認証決済を導入している大手ベーカリーチェーンwedome(味多美)のチーフ・インフォメーション・オフィサー、Bo Hu氏は次のように説明する。

「携帯電話さえ持ち歩かなくていい。手ぶらで外出して買い物ができる。これはモバイル決済の初期には不可能なことでした。顔認証技術が誕生して初めて、他のデバイスを全く用いずに決済ができるようになったのです」

この技術自体はすでに交通違反の取り締まりや犯罪者の逮捕など、主に市民を監視する目的で広く使われている。しかし特に厳しい監視下に置かれている新疆ウイグル自治区で反体制派の取り締まりと監視にこの技術を使用していることについて政府に対する批判が強まっているのも確かだ。

豪シドニーにあるマッコーリー大学の中国研究者、Adam Ni氏は「このソフトウェアには非常に大きな危険が伴います。例えば新疆ウイグル自治区のウイグル族に対する事案のように、反体制派の監視や追跡、社会と情報の統制、エスニック・プロファイリング(特定の民族を対象とした捜査)、さらには予測に基づく事前の取り締まりなど、政府が自分たちの目的のためにデータを使う可能性があるからです。これが、顔認証データの収集と使用に関する最も大きな争点の一つであることは間違いありません」と説明する。

しかし、データセキュリティーとプライバシーに対する懸念とは裏腹に、消費者は顔認証決済の実用化を冷静に受け止めている様子だ。

例えば、これまでこの分野を牽引してきた中国EC大手、Alibabaグループの決済サービスであるAlipayは、すでに100都市で導入されている。さらには、顔認証決済は巨大な成長を遂げると予測するAlipayは最近iPadと同等サイズのデバイスを使うSmile-to-Payのアップグレード版をローンチした。またAlipayはこの技術の普及のために向こう3年間で30億元(約450億円)を投資する計画を立てているという。

ユーザー数6億人を誇るWeChat(微信)アプリを運営するTencent(騰訊控股)も、今年8月に新たな顔認証デバイスのFrog Proを発表した。また一方で、急成長中のこの分野へ新規参入を目指すスタートアップ企業も増加している。

香港の調査会社Counterpointのアナリスト、Mengmeng Zhang氏は顔認証決済について「主要なモバイル決済企業の後押しもあり、広く普及する可能性はあります。Alipayは、顔認証決済を導入する業者に助成金を出したり、消費者に特典をつけたりして、この技術の普及に多額の資金を投入しているのです」と語る。

中国・天津のセルフサービス式スーパーマーケットIFureeでは、入店時に顧客の顔を3Dカメラでスキャンして顔の特徴を計測し、会計時に再度スキャンするシステムを導入している。

同店の顔認証決済で買い物を済ませた年配のZhang Limingさんは、「さっと買い物を済ませられるので便利です。従来のスーパーではレジに並ぶのでとても面倒でしたが、それとは全く違いますね」と話した。

プライバシーよりも虚栄心が勝る

Hu氏は、顔認証決済システムを導入する店舗の数を400まで拡大する予定だと述べている。同氏は、このシステムによって会計のプロセスがより効率化されると確信しているが、利用者数はまだそれほど多くないことも認めている。しかしこの新技術はより多くの顧客データを集める方法としても期待されている。

英オックスフォード大学AIガバナンスセンターの研究者、Jeffrey Ding氏は次のように指摘する。

「万引き防止と消費者の嗜好に関するより正確なデータを収集し、分析やマーケティングに活かすという2つの目的を持った企業がスマートリテールのトレンドを牽引しています」

また、この技術は、中国政府が力を入れているスマート技術や人工知能(AI)の開発とも緊密に関連している。

「顔認証決済の大規模な導入は顔のプロフィールや利用目的といった膨大なデータをIT企業に提供することになるため、顔認証技術をAI産業を支える柱の一つに発展させるという政府の計画とも合致しています」と米シンクタンク外交問題評議会のAdam Segal氏は言う。

顔認証決済の技術を支持する層はプライバシーに関する問題は少ないと考えているようだ。

IFureeでエンジニアを務めるLi Dongliang氏はこう説明する。

「顔認証技術はプライバシーの保護に役立ちます。従来の方法では隣に他人がいる時にパスワードを入力するのはリスクを伴う行為でした。今では自分の顔で決済を完了できるので、アカウント自体を保護することができます」

しかし、このように便利な顔認証技術システムを使いたくないと消費者の多くが思う理由は、プライバシーに対する懸念ではなく“虚栄心”であるという調査結果もある。というのもニュースポータルSina Technologyが行ったアンケートによると、回答者の60%が決済のためにスキャンした自分の顔を醜く感じたという。

そこで使用する全てのカメラに美化フィルターを導入するという公約を発表したAlipayは「盛れる自撮りアプリを使うよりも、ずっと綺麗な顔に写りますよ!」と消費者に説明している。

この記事はDigital Journalに掲載され、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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