Nikeのマーケティング戦略を表す旗艦店 その中心はスマホ

June 03, 2019
Nikeのマーケティング戦略を表す旗艦店 その中心はスマホ
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Nikeが描く実店舗での買い物の未来。その中心にあるのは携帯電話だ。

Nikeはニューヨークに新たな旗艦店をオープンした。同社は数年にわたり社内で、個人ごとにカスタマイズされた「体験型」のショッピングについて調査を行ってきたが、この店舗はその集大成と言える。今後世界各地で展開を予定する新店舗のひな形でもあるこの6階建てのビルは、Nikeアプリと途切れなく連動するよう作られており、買い物客は自分のスマートフォンを使って支払いを行ったり、試着室に商品を届けてもらったり、Nikeのスタイリストに予約を入れたりすることができる。

このNikeアプリをダウンロードした人は自動的にNikePlusの会員になる。会員になると、割引や個別のおすすめ情報、限定商品の案内など、さまざまな特典を受けることができる。NikePlus会員のNike.comでの購入金額は、非会員客と比べて3倍も多い。スニーカーとスポーツウェアの世界最大メーカーであるNikeは、従来型の小売モデルに少々変更を加えることで、実店舗でもネット販売と同様にNikePlus会員の購入額を非会員客の3倍にすることが可能だろうと考えている。

「携帯電話は日常生活の中心的存在であり、来店客でデジタルデバイスを持っていない人はいない」とNikeのAdam Sussman最高デジタル責任者(CDO)は語る。「店舗での買い物とデジタルでのショッピングの垣根を低くしたいと考えている」

しかしながら、この未来のNikeストアが目指しているのは、店舗内での売上アップではない。狙いはむしろ、Nikeブランドのエコシステム全体の入り口としての役割を果たすことだ。言うなれば、6階建てのビル全体がNikeのマーケティング戦略という訳だ。店舗内でシューズを買うことももちろん可能だが、Nikeアプリをダウンロードしただけで出ていったとしても、Nikeとしてはまったく問題ない。

小売業向けコンサルティングを行うWSL Strategic RetailのWendy Liebmann最高経営責任者(CEO)によれば、Nikeに加えてアマゾンのAmazon BooksやAmazon Goを筆頭に、小売業界ではショッピング体験でアプリが必要不可欠な存在になりつつある。「アプリを買い物客にすすめるには訳がある」とLiebmann CEOは語る。「これは『どうすればあなたのことを知ることができる?』『どうすればあなたとつながり、私のコミュニティに参加してもらうことができる?』というマーケティングであり、すぐに売り上げにつなげることは重要ではない」

Nikeは新たな小売りのあり方を試そうとロサンゼルスにコンセプトストアを開いた際、このアプローチを垣間見た。同社は会員の購入履歴などを追跡し、このコンセプトストアに来たことがある人とない人を比べた。来店経験がある会員とない会員では、来店経験者がその後のオンラインショップで使った金額が、来店したことのない人の金額より30%も多かった。

面積68,000平方フィート(約6,320平方メートル)のニューヨークの旗艦店は、ロサンゼルスのコンセプトストアからいくつかの着想を得た上で、そこにさらに手を加えている。スマートフォンとの連携や会員に対する店舗での特典提供には大きく2つの目的がある。顧客によりよいショッピング体験をしてもらうことと、顧客の属性や好みに関するデータを収集することだ。こういった情報は、ゆくゆく商品デザインや在庫の管理にも活かすのだろうか?「(顧客情報の収集は)Nikeにとってもお客様にとってもメリットがある」とNikeダイレクトのプレジデント、Heidi O’Neill氏は語る。

Liebmann CEOによれば、Nikeは長らく小売業を引っ張るリーダーと見なされてきた。マーケティングについても同様だ。今年はじめにNikeは、Colin Kaepernickを起用し議論を醸す広告キャンペーンを展開したが、同社の決断を多くの人が称賛したのは、他でもない、マーケティング巧者としてのNikeの評判があったからこそだ。Nikeは自分の顧客を理解している、という話はよく聞く。だから問題となったこの広告キャンペーンも、顧客が望んでいるものに違いない。

NikePlus会員のすそ野は広く、そのためNikeには細かくセグメント分けしたマーケティング活動が可能で、ショッピング体験を特定の人向けにカスタマイズすることができる。NikePlus会員の購入金額が非会員に比べて多い理由の1つはこのためで、顧客がブランドに対する信頼と愛着を高める一方、Nikeは顧客に対してよりよい直接的なコミュニケーションができるようになる。

またこれらの「未来型」店舗は新たな会員の獲得に大きく貢献している。Nikeの通常の実店舗に比べて、ロサンゼルスのコンセプトストアでのNikePlus会員の獲得率は6倍にもなる。Nikeはニューヨークの旗艦店と似た店舗を上海に開いたが、ここでは2分間に1人の割合で会員を獲得している。

「ここは会員獲得、会員維持、そして会員との関係づくりのチャンスが生まれる店だ」とO’Neill氏は言う。

オレゴン州ビーバートンに本拠を置くNikeは、今もスポーツギア業界に君臨する巨人ではあるが、競合のadidasにここ数年で市場シェアを奪われたことで、変貌を図っている最中であり、まさにそのタイミングで「未来型」新店舗をオープンした。Nikeは市場シェアを取り戻すため、イノベーション、スピード、顧客直販をそれぞれ倍にするという「トリプルダブル」戦略を打ち出した。昨年度のNikeの売上の29%(104億ドル)は直販によるものだが、これはデザインを一新したウェブサイトとアプリ、世界中にある約7,000店の実店舗からの売上だ。

同時に、Nikeは多くの小売店との取引をやめ、Foot lockerやNordstromなど、最も生産性が高いと考える約40社との取引に集中した。Nikeはまた、あらためて都市部に重点を置くことを決め、同社の短期的成長の大半を担うであろうニューヨークや上海など12の主要都市を強化対象と位置付けた。

Nikeのアプリはジオフェンシング技術を用い、利用者が入店した瞬間に、ホームページを顧客に合わせて変更し、その好みに合った最新の商品、サービスやコンテンツを表示する。店舗内では、スタイリングや運動目標に関する1対1のコンサルティングを予約したり、マネキンをスキャンして着ている商品の情報を得たり、あるいは特定のサイズの商品を試着室まで持ってきてもらうよう手配することも可能だ。Nike会員であればスマートフォンでの決済や、予約済みの商品を1階のロッカー(ご想像通りスマートフォンで解錠できる)で受け取ることもできる。

また商品をいろいろな形でカスタマイズすることもできる。もし染料を落ち着かせるため20分待つことができるなら、好きな色のシューズをオーダーすることもできるし、気に入ったNikeロゴを縫い付けたり、店舗内に陳列されているパッチワークをウェアにプラスしたりすることもできる。

Nikeはニューヨークや上海に続き、2019年後半にはパリで「未来型」の店舗をオープンする予定だ。

「現代の小売りの未来を私たちが先導し、刷新しているのだと確信している」とSussman氏は語る。「そしてこの店ほどNikeブランドに浸り、新たなショッピング体験を楽しめる店はない」

この記事はBloombergのEben Novy-Williamsが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

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