古民家再生により生まれた宿泊施設で地域の想いを後世につなげるNIPPONIA

November 27, 2020
古民家再生により生まれた宿泊施設で地域の想いを後世につなげるNIPPONIA
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古民家を宿泊施設に再生する事業を軸にして地域活性化に取り組む株式会社NOTE。地域の歴史や文化に光を当てその価値を高めて提供、地域の人々と手を組み、地域で宿泊施設の運営を担うことで地域内の雇用を生み、旅行客が宿泊することで地域の交流人口を増やす。そんなNIPPONIAという事業はどのような理念と手法によって運営されているのか。代表の藤原岳史さんに話を聞いた。

藤原さんは兵庫県丹波篠山市の出身。大学卒業後に大阪の外食産業に就職し、その後ITベンチャーに転職、2007年にIPOを経験した。2008年に退職した後には故郷である丹波篠山市の再生に関わり始め、2009年に一般社団法人ノオトを設立。同じ年の11月、丹波篠山市の丸山地区に最初のNIPPONIA事業である「集落丸山」をオープンさせた。

村に明かりを灯す

「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる」。そんなミッションを胸に、その土地の古民家や文化資源を生かしたまちづくり事業「NIPPONIA」を行う株式会社NOTE。2020年11月現在、北は福島県から南は福岡県の23の地域で、醸造蔵や駅舎から山村集落まで98棟の古民家を再生。各地域の「原風景の未来」を再創造している。2021年度中に29地域まで拡大する予定だ。

「古民家再生事業に取り組んでいる会社だと見られがちですが、実際はまちづくりを目的とした事業を行う会社です。」と藤原さん。「僕自身も田舎出身で、高校を卒業するまで『はよこんな田舎から出たい』と思っていました。大学進学を機に篠山を離れましたが、いざ都会で暮らしてみるとどこか故郷に貢献したいという気持ちがあることに気づいて…」

「集落丸山」(兵庫県丹波篠山市)
NOTEが最初に手掛けたのは「集落丸山」(兵庫県丹波篠山市)。藤原さんの故郷の原風景そのものだ。

全国のまちづくり事業を見ながら自らも事業展開する中で、まちづくりのアプローチには2種類あることが分かったという藤原さん。一つは徳島県神山町のように「仕事ごと持ってくる」移住のパターン。二つ目は観光から入るパターンだ。「いろいろと取り組んでみた結果、僕らは後者を選びましたが、どちらにしてもやっていることは同じで『地域の空き家に明かりを灯す』ことなんですよね。僕はNIPPONIAの事業を一泊からできる移住体験だと思っています。一泊から始まって一生までの体験を提供すること。それが僕たちの目指すものです」

江戸時代から続く村には、そこにある必然性がある

NIPPONIAとしてまちづくりを手掛けるにあたって大切にしているポイントを教えてもらった。

「地域的なことで言いますと、明治時代に入る前までに開村されていること。日本の人口は明治時代から急に伸びていきますが、江戸時代は3000万人程度で推移しているんですね。土地の条件など良い塩梅で住めるところに村ができていて、それはたまたまではなくそこに村が作られた意味があると思っています」

「但馬 古民家の宿 大屋大杉」(兵庫県養父市)
「但馬 古民家の宿 大屋大杉」(兵庫県養父市)では循環型の生業が根付く山村ならではの体験も。

宿泊施設として活用する古民家に関しては、戦前に建てられたものであるか否かがひとつの選択基準だ。
「分かりやすく言い換えると、建築基準法ができる前に建ったものを対象にすることが多いです。戦前の家屋は、昔ながらの伝統工法を使って、大工さんが現場合わせで組み立てているんですよね。全く同じものがない。地域ごとに特徴も異なり、例えば飛騨の山奥で使われる工法と九州のそれとでは違うわけです。その風合いや空間を大切にしたいと考えています」
だから古民家を再生する際にも「建った当時の状態に戻す」という考え方で再生するのだという。

「NIPPONIA 出雲平田 木綿街道」(島根県出雲市)
「NIPPONIA 出雲平田 木綿街道」(島根県出雲市)はもともと酒蔵だった建物の構造を活かしてリノベート。

その建物が建てられた当時の建築基準法を超えないで修繕するイメージといえばよいのだろうか。
「僕らは100年前や200年前に人が暮らしていた当時の建物に戻していくだけ。こうすることで “建物に蓄積された時間”が武器になる」
例えばフローリングになっていた土間を当時の状態に戻すなどして、その建物がどのように使われて来たのか感じられるような空間にするそうだ。

大切なのは「郷(さと)にいること」

NIPPONIAのオリジナリティは、地元の事業者や人々と協業するスタイルにも現れている。例えば「集落丸山」では宿泊客をもてなすのは地域の住人だ。もともと田舎には人をもてなす文化があり、その能力も高いと藤原さん。「街道筋や城下町には旅人をもてなす文化が強く残っています。例えば四国にはお遍路さんに食事を出したり泊めてあげたりする文化もあります。都会の人が思うより、田舎では旅人を一晩泊めるということに対するハードルが意外と低いんですね」

「集落丸山」の地域の住民
「集落丸山」ではフロント業務から食事の提供など宿泊施設を運営する業務は地域の住民がすべて行なう。

「青写真を描いて『このあとは、あなたたちがやってください』と投げたり、遠隔で口だけ出したり…ということは基本的にしません。事業を展開する場所で地域への想いを持つ地域の方と共同出資して会社を登記し、ともに運営していくというスタイルです」    

こうした共同出資会社は毎月のように増えていて、現在は全国に26社ある。大枠としては、地域の人たちは「おもてなし」を中心としたフロントラインに立ち、NOTE 社員含めた共同出資会社の社員は地域の文化や歴史を知るための地域調査や古民家改修等に必要な資金調達、施設完成後のマーケティングを担当するというスキームだ。「1軒につきおよそ3000万円程度かかる改修費用を調達する手法や仕組み作りのノウハウを私たちは持っています。一方でその土地の文化や伝統を残したい、地域の想いを次世代に繋げたいという情熱が地域にはある」

NOTEでは、お互いの能力を重ね合い、役割を分担しながら、地域に根を張って事業に取り組んでいる。これがNIPPONIAの価値であり、NOTEではこれを「郷にいること」と呼んでいる。

2020年8月にOPENした新棟「崖の家」
「NIPPONIA 小菅 源流の村」(山梨県小菅村)。写真は2020年8月にOPENした新棟「崖の家」。

土地を深く理解することがコアなファンを掴む

NOTEでは、地域で物件を再生し宿泊施設を開業するまでにおよそ3年をかけて準備を進めていくという。

1年目は地域調査に費やす。
「まずは地域の人とのコミュニケーションから始めます。その中で地域のステークホルダーを見つけます。この地域の生い立ちを知っていて、キーパーソンになりうる人物。そういう人は必ずいるんですが、初めの頃は『私は関係ないから』っていうふりをされることが多いので(笑)、慎重に見つけていきます」。並行して、この地域が生まれた歴史背景を調査する。その土地になぜ人が住み始めたのか? ここに神社があるのはなぜか? 村人の心の支えになっている建築物やシンボルはあるか? 1年間かけて地域と共通認識を作り上げることで「長期的な視点でまちづくりをする」という認識も醸成させるのだという。

2年目はまちづくり計画と資金調達だ。
例えば地域の中に100棟空き家があればその中から使えそうな空き家をピックアップしエリア計画を練る。この段階で最初に挙がった数の3分の1程度まで空き家が絞られていく。その中で1期目に開発すべき中心となる空き屋を決めるのだ。並行して、資金調達を実行する。

3年目に着手し約1年かけて改修を進める。ちなみに各地域の事業はいくつかの「期」に分けて開発するというモデルを敷いている。「1期目の工事には、およそ1億から2億の投資が必要になる。関わっている人の視点を合わせる作業にも時間がかかります。ただ1期目がオープンした時には、2期目、3期目の計画が既にできている状態にあるから、そこから先はスピードを上げていけるという事業計画です」

地域の文化と魂を守るために

「NIPPONIA 小菅 源流の村」
「人口700人の村がひとつのホテルに」。
そんなコンセプトで村の名士の邸宅を改修した「NIPPONIA 小菅 源流の村」。

例えば山梨県小菅村に2019年オープンした「NIPPONIA 小菅 源流の村」も、2016年から開発が始まった。 「小菅村には舩木直美さんという名物村長がおられるんです。彼が言うことには、人口700人の小さな村なのでいずれ合併して小菅という名前がなくなるかもしれない、と。ただ合併しても小菅村の文化は守りたい。“魂”を今のうちに移植して、自分たちが守らないといけないとおっしゃった。そこで村一番の庄屋さんの自宅を核にして、小菅らしさを探っていきました」

「崖の家」の内装
「崖の家」の内装。崖からせり出すようにして建てられた古民家なので、窓外には圧倒的な森林の風景が広がる。

小菅に興味持って来てくれる人に「小菅村ならではの特徴」をどう伝えるか――。調べるうちに、崖からせり出すように建っている古民家があることを知り「崖の家」という古民家宿へと結びついた。

コロナ禍中でも昨年対比で150%

2棟のコテージからなる「崖の家」は2020年8月に「NIPPONIA 小菅 源流の村」に新しく加わった。他の宿泊客と会う機会の少ない1棟貸し切りスタイルで稼働させ、基本的には施設のサービススタッフとしか対面せず、チェックアウトとチェックインも各部屋で。さらには、食事は届けられた食材を宿泊客が調理することもできるようにし、農作業体験など屋外でのアクティビティも充実させた。このように新型コロナウイルス感染拡大防止対策が徹底されている。

「崖の家」と同じようにNIPPONIAの宿泊棟は1 棟貸しの客室も少なくない。新型コロナウイルス感染拡大によって発出された緊急事態宣言が解除されるや予約が入り始め、6月には7割、7月には8割まで稼働率が回復。「NIPPONIA 小菅 源流の村」では8月は昨年対比で150%の稼働になり、以降、同じ水準で推移しているという。

全国の地域に灯りを点すために

藤原さんはNIPPONIAとして再生する古民家の目標棟数を「3万棟」と公言している。現在、全国に古民家が150万棟あるとされており、文化財や国宝として保存されているのはそのうちの1%にあたる1万5000棟のみだ。「当初は20%の約30万棟は資金回収しながら事業展開できるのではと計算していました。計算上は可能なんですが、実際に事業化するとなると、毎年1万棟再生しても30年かかり、毎日30軒の竣工式に出ないとならない。…あ、現実的にこれ無理やと(笑)」

そうであれば、事業のノウハウをどんどん公表して仲間を増やしていく、と藤原さん。「その中で言い出しっぺとして目標の30万棟のうちの1割は責任を持たないとな、と。僕の代だけでなく、次の代表や社員を含めて、この目標を大切にできる会社に育てていきたい。今は目標の0.02%とか0.03%くらいです。個人的には『だいぶ見えてきたな』と感じていますが、社員には苦笑いされてます(笑)」

今後はワーケーションにもターゲットを広げるというNIPPONIA。「観光」と「仕事」、「一泊からの観光」と「一生住む」の間をつなぐ会社として、日本の様々な地域に光を灯してくれるだろう。

NIPPONIA

宿泊費を賢く支払う

地域の再生と活性化を確実に見据えながら、各地で増えていく NIPPONIAの宿泊施設。主な利用者の属性は大きく3つだと藤原さんは言う。一つ目は、子育てを一段落させた経済的に余裕のあるアクティブシニア。二つ目は自分のことにお金を使える30〜40代の女性3〜4人のグループ。そして三つ目は最近目立ってきた3世代での旅行。おじいちゃんから孫までの家族だそうだ。またNIPPONIAを訪れる利用者の中で多いのは、親の世代から都市部に暮らし田舎を知らないという人たち。NIPPONIAの施設に「なつかしさ」を求め、そこに滞在する価値を見出している。

NIPPONIAブランドの宿泊費は平均5〜6万円/室。決して安くはないが、その地域だけで楽しめる唯一無二の古民家の空間に浸り過ごすことに価値がある。全施設はクレジットカードでの支払いも対応しているのでぜひ有効活用してほしい。ポイントを貯めるという意味でもクレジットの利用はお得だ。旅先のような非日常の場面でなく、もちろん日常生活の中でも、公共料金の支払いや買物など、さまざまなシーンでポイントを貯めることができる。さらに、一度ポイントを交換すれば、有効期限が無期限になるカードも。貯まったポイントの使用方法もカード利用の支払いから、マイルや提携ポイントへの移行、カード会社が厳選した特別なアイテム・体験との交換など、カードによってさまざま。ライフスタイルに合わせて多様な選択肢があるクレジットカードを選ぶとよいだろう。

TEXT:柿本礼子、PHOTO:株式会社NOTE

▼株式会社NOTE 公式HP
▼NIPPONIA 小菅 源流の村 公式HP

LifExpress編集部

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