廃棄食材でつくるFood Paperの多面的価値。五十嵐製紙の挑戦

September 24, 2020
廃棄食材でつくるFood Paperの多面的価値。五十嵐製紙の挑戦
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福井県は越前和紙の老舗「五十嵐製紙」が手がける「Food Paper(フードペーパー)」。廃棄された野菜や果物を原料にしたこの紙が、フードロス(食品ロス)問題に対して一石を投じる画期的な取組みだとして話題を呼んでいる。

左から、たまねぎで作ったストッカー、じゃがいもによるB5版ノート、メッセージカード(ぶどう・ねぎ)、小物入れはにんじんが原料だ。
左から、たまねぎで作ったストッカー、じゃがいもによるB5版ノート、メッセージカード(ぶどう・ねぎ)、小物入れはにんじんが原料だ。

次男の探究心が道をひらく

きっかけは、創業一家で伝統工芸士の五十嵐匡美さんの次男、優翔さんが小学生の時からはじめた自由研究だった。幼いころから工房が遊び場だったという優翔さんが、5年をかけてさまざまな種類の野菜、果物の切れ端や皮を使って製紙を試みたそうだ。その結果、タマネギやニンジン、ミカンの皮から和紙がつくれることがわかった。

匡美さんは2019年7月~11月、知り合いだったデザインスタジオ「TSUGI」の新山直人氏とともに地域ブランドのセレクトショップや通販サイトを運営している「中川政七商店」が講師を務める「経営とブランディング講座」(主催:ふくい産業支援センター)を受講。野菜や果物でつくった和紙のコンセプトが最終プレゼンテーションでみごと最優秀MVP賞にかがやき、2020年2月に開催された中川政七商店主催の「大日本市」に出展した。ここでも来場者の好感度ランキングで上位に入賞し、2020年3月に「Food paper」ブランドを立ち上げて専用サイトを開設。メッセージカードやノートの販売をスタートさせた。

次男の探究心が道をひらく
提供:五十嵐製紙

和紙の原料が絶滅危惧

五十嵐製紙の創業は大正8年。1500年の歴史がある越前和紙の伝統を守りながら、顧客の要望に応じた創作和紙に力を入れ、最近では著名アーティストのオーダー用紙も制作した。ガラスに和紙を挟み込んだ「和紙ガラス」、「和紙時計」、「和紙あかり」といった小物類など、和紙の魅力を生かしたアイデア商品も販売する。

和紙の原料が絶滅危惧
提供:五十嵐製紙

しかしながら、近年は和紙の原料不足に悩まされていた。原料である楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の生産量は軒並み減少。とくに楮は最盛期のわずか1.2%にまで落ち込んでいる。破棄された野菜や果物を原料にしたFood Paperを商品化した背景には、こうした原料不足という課題があった。

和紙の材料
提供:五十嵐製紙

「和紙の材料になるためには繊維質が含まれていることが必要。ですから、理論上、どんな植物でも可能なのですが、実際に試してみると強度や作業性の面でうまくいかないものもあります」と匡美さん。原料に含まれる繊維を煮沸して不純物を取り除き、たたいて強度を増す。そこにネリと呼ばれる天然の粘着剤を加えて漉くというのが、ごく大まかな越前和紙のつくり方だ。

越前和紙
提供:五十嵐製紙

原料50%削減に成功

「たまねぎ」、「茶」、「ごぼう」、「ぶどう」など8種類をそろえるメッセージカードの場合は、原料の5割が野菜や果物で、残り5割に楮を使う。楮だけであれば白色の紙に仕上がるが、Food Paperは原料の色が反映される。ニンジンならオレンジ色、ミカンなら黄色、ネギなら黄緑色。いずれも淡い色合いだが、それが上品で美しい。

メッセージカード
これはメッセージカード。左はぶどう、右がねぎ。光を通すと食材の存在感がよりいっそう際立つ。

加えてブドウの皮やお茶の葉などが自然な模様を描き出す。凹凸がはっきりしていて無骨な印象だが、触れるとしっとりした紙質は、和紙でも洋紙でもない独特な風合い。「本当は匂いも残るかなと思って期待したのですが、それはあんまりでしたね」と匡美氏は笑う。メッセージカードのほかにも小物入れ、ストッカー、サコッシュなど多彩な商品をラインアップする。

お茶でつくられたサコッシュ
お茶でつくられたサコッシュ。粒子状のお茶の緑が鮮やかだ。
提供:五十嵐製紙

当事者になって初めて見えたロスの凄さ

原料は役所を通じて知り合った農家や農協、生協などから無償で仕入れている。軽トラックに乗って匡美さんがみずから足を運ぶそうだ。

「当初は原料不足の解決策になればとスタートした事業でしたが、始めてみてあらためてフードロスの問題の根深さ、深刻さを認識しました」。タマネギやミカンの皮は、捨ててしまうもののだから構わない。しかし、どう見ても食べられそうなブロッコリーなどが「廃棄物」として提供されることもある。「せっかく農家の方が丹精込めてつくっても、ちょっとでも傷があったり、規格に合わなかったりしたら捨てちゃうんです。これはやっぱりおかしいし、解決するには消費者の意識を変えるしかないと思うんですよね。Food Paperが少しでもそのお役に立てるといいのですが」。

匡美さんが話すとおり、農林水産省によると日本のフードロスは年間612万tにものぼる。しかもこれは小売業や外食業、家庭などで廃棄された食品の数字で、出荷前に畑で廃棄された農作物は含まれていない。したがって、正確な数字はわからないが、相当な量の農作物が食べられるにもかかわらず捨てられていることは間違いない。

使い方を考え始めると、止まらない…

新型コロナウィルスの感染拡大の影響でイベントなどでの対面販売がむずかしいため、現在Food Paperは「TSUGI」が運営する通販ショップ「SAVA! STORE」で主に販売している。支払いはクレジットカードによるネット決済が便利だ。

一般向けの商品のほかに、今後は製造業や小売業、外食業をはじめとする他業種とのコラボレーションも模索していく予定だ。「ワインのラベルや包装紙、封筒とか。飲食店で使うランチョンマットや箸袋、ショップカードに使っていただくのもいいですね。特注商品のご要望は、よろこんでお受けいたしますよ」と匡美さん。

ぶどうのメッセージカードでワインの銘柄を表記
たとえば、ぶどうのメッセージカードでワインの銘柄を…というような使い方も。

原料不足という産業課題を解決するために生まれた紙だが、フードロスという社会課題にコミットできるという可能性が広がった。そして、食のトレーサビリティを学べる教育ツールとしても活用できる。使うたびに社会が抱える「何か」に思いを馳せることのできる紙。とても素敵な紙だ。

たまねぎの皮が浮き上がり、見た目は無骨な印象も受けるが、撫でるように触れるとしっとりとした優しい質感。
たまねぎの皮が浮き上がり、見た目は無骨な印象も受けるが、撫でるように触れるとしっとりとした優しい質感。

使うことで社会を支える

なにも無ければただ捨てられるだけだった野菜や果物たちに、新しい役割と活躍できるステージを設けたFood Paper。私たちはそれを使うたびに和紙業界が抱える課題に思いを馳せることができ、社会が抱えるフードロスの問題に微力ながらも関与できる。

消費することが、何かの応援になる――。そんな考え方は2011年の東日本大震災以降、私たちのデフォルトになりつつある。もちろん個人消費の単位は残念ながら小さい。しかし、みんなが同じ「応援する」という目的で消費活動できるプラットフォームがあれば、目的意識と消費の結果がひとつにまとまるという状況が生まれる。

アメリカン・エキスプレスでは「小さな買い物、大きな応援。一人ひとりの小さなお買い物が、地域のお店へのBACKING(=応援)になる」…そんなステイトメントのもとで「SHOP SMALL®」キャンペーンを2017年から毎年実施している。これまでは横浜と神戸を舞台に街路で上演するミュージカルイベント「STREET THE MUSICAL」の開催や、対象店舗での買い物の際にオリジナルトートバックのプレゼントを実施するなど、地域の商店を始めとしたスモールビジネスを応援する企画を実施してきた。

2020年は全国約10万店の対象店舗でカードを利用すれば30%のキャッシュバック(カード1枚につき、キャッシュバックは5,000円まで)を得られるという内容で展開したこのプロジェクトは9月24日で終了したが、今後もさまざまな手法で地域の店舗を応援するプロジェクトが企画されるであろう「SHOP SMALL®」から、しばらく目を離すことができなそうだ。

大きな応援となる、小さな買い物のために。アメリカン・エキスプレスの「SHOP SMALL®

TEXT:石田哲大、PHOTO:sono ※その他の提供元は各写真に記載

Food Paper 公式HP

LifExpress編集部

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