Paypalの買収がオンラインショッピングを変える

December 23, 2019
Paypalの買収がオンラインショッピングを変える
Scroll Down

米オンライン決済サービス大手Paypalが宝の山を掘り当てた。2019年11月末に行われた発表によると、オンラインショップの価格比較やクーポン情報を配信・提供するブラウザ拡張機能&アプリを手掛けるHoney Science Corporation (以下Honey)を40億ドル(約4,341億円)で買収することに合意したという。現在Honeyの月間ユーザー数は1,700万人、約30,000店のオンライン小売業者と提携している。

アナリストの観点から言うとこの買収は信じられないほど素晴らしい決断である。実際、双方にとってこれ以上に良い取引相手はいなかっただろうし、Honeyにとっては2,400万の加盟店と2億7,500万のユーザーを有するPaypalは望むべくもない買い手だからだ。

ほとんど無名に近いHoneyを知らない方のために説明すると、この会社に40億ドルもの値札がつく理由としては以下が挙げられる。Honeyはクーポンコードを追跡するブラウザ拡張機能から出発し、今では商品の最低販売価格の提示とそのトラッキングはもちろん、ウィッシュリストに登録した商品が値下げされたら通知する機能を有している。消費者がオンライン購入する際の節約をサポートし、また独自のHoney Goldプログラムを通じてユーザーや小売店に手数料や謝礼をペイバックする機能もある。

2018年からの成長は目覚ましく、同社によると同年に1,000万人だった会員数は2019年には1,700万人にまで拡大。また2018年のHoney利用者全体による節約総額は8億ドルだったが、2019年は11月までで節約した総額はすでに10億ドルを超えるという。Honeyは旅行業でKayak(旅行検索・料金比較を行うWEBサイトおよびアプリ)が採用した仕組みをオンラインショッピングに適用している。

カスタマージャーニーの強化

ユーザーがオンラインでの購入に至るまでのプロセスを指すカスタマージャーニーにおいては「アイデンティティ」「行動」「意思」が三位一体の重要な要素である。

その出発点がデータである。これまでPaypalは顧客情報に関しては世界有数のデータを有する会社だったが、それはオンラインにおけるカスタマージャーニーの最終段階(=実際の購入)に限られていた。そこには潜在顧客獲得のファネルも、ユーザーの意思や行動に関する詳しいデータは含まれていない。つまりPaypalには顧客の購買意思やオンラインで何を検索していたのかといった購入の前段階に関するデータはなかったということである。

基本的にPaypalは顧客のアイデンディ(ユーザーを特定できるデータ)と行動(ユーザーが購入時にとったアクション)のデータをすでに持っている。そしてHoneyを傘下に収めることで、ついにユーザーの意図に関するデータも入手したのだ。これによりユーザーの将来的な行動も予測することができるようになったのである。

AmazonやFacebookのように顧客エンゲージメントを強化するプラットフォームを手に入れたPaypal。これにより単なる決済手段としての存在を超え、ユーザーにとって最も有益な商品を見つけ出し、カスタマージャーニーを通して強固な関係性を築いていくことができるようになる。しかも顧客一人一人に合わせたやり方で、である。

顧客体験(CX)の視点から見ると、カスタマージャーニーの入口が一つに統合されることとなった。もしユーザーがPaypalにログインしてHoneyのブラウザ拡張機能を有効にすれば、Paypalはユーザーの行動を全て把握できる立場に立てる。

買収による相乗効果

PaypalにとってHoneyの活用法は無限だ。ベストの選択肢ではないかもしれないが、Honeyがクーポンを収集する追加サービス料を2,400万の加盟店から徴収することもできる。それよりもHoneyのサービスを「フリーミアム」(freemium=基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能を追加する場合に課金する仕組み)としたほうが、加盟店への浸透を加速できるかもしれない。

これまでAmazonでばかり買い物をしてきた消費者も、特価情報を自分で探してお気に入りのブランドや小売店から直接購入できるようになる。さらに、AmazonやApple PayなどのECアグリゲーターではなく、Paypalが管理する「マスターカート」に商品を追加することが可能になるのだ。

PaypalがHoneyと融合するもう一つの方法としてはすでに廃止されてしまったが、同じ商品をより安く売っている業者を消費者が見つけたら全額返金するというWalmartの最低価格補償Savings Catcherのような機能を採用することも考えられる。

さらには、ユーザーの居住地に基づいて出品者をレコメンドしたり、収集したデータから配信可能なクーポンの宣伝をすることによっても、Paypalは提携ストアからの収益を上げることができるだろう。

また、商品をカートに入れたものの購入に至らないカゴ落ちと、カスタマージャーニー上の“意思”に関するデータを結びつけて、この問題に対処するのに最適なツールを効果的に開発することができる。オンラインストアを悩ませるカゴ落ちは、顧客エンゲージメントの決定的な問題点として対処が望まれている。PaypalによるHoneyの買収はこの問題に対するこれまでに類を見ない強力なソリューションを生み出すことになるかもしれない。

一方Honeyは、Paypalの2億7,500万人におよぶユーザーにアクセスすることができるようになる。そしてEC業界全体にも、Amazon独占に挑むことは不可能ではないという大きな活気を生むことにもなった。

Amazonの独占を崩す

私たちの生きる現代は、消費者と関連性の高い情報の提供が勝敗を左右する時代である。そしてPaypalによるHoneyの買収は、オンラインショッピングで最もコストパフォーマンスが高いのはAmazonに限らないという将来を提示することとなった。消費者はクーポンアプリを使って価格をリサーチ・比較することができるだけでなく、その消費者がすでに特定のブランドに興味がある場合には、Amazonよりもコストパフォーマンスの高い小売業者へと誘導することができる。

今やカスタマージャーニーの全行程を手に入れたPaypalは、特定の商品の値下げやクーポン配信によって顧客を囲い込むだけでなく、提携ストアと節約の最大化という2つの側面を持つプラットフォームを既存のPaypal会員に提供することによって、カスタマージャーニーの構造を大きく変化させることができる。

顧客の詳細なデータを確保し活用することを可能にしたという点で、PaypalによるHoney買収はEC業界全体に様々な影響を与えることになる。これによってPaypalはパワープレイヤーの地位を獲得し、Amazonの独占状態が磐石でなく他のプレイヤーたちにも戦う余地があることが示されたのである。

 

この記事はVentureBeatのAbhi Yadav および Zylotechが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

pick up

new article

View All

当サイトからのお申し込みで
合計20,000ポイント*
獲得可能

詳しくはこちら
  • ※年会費31,900円(税込) 家族カード1枚目無料、
    2枚目以降13,200円(税込)
  • ※カードのお申し込みに関する詳細はこちらでご確認ください。
  • *アメリカン・エキスプレスのポイント・プログラム
    "メンバーシップ・リワード"のポイント